冬の宝登山―ロウバイ咲く静かな山歩き~秩父・宝登山~

ロウバイの長瀞アルプスは宝の山

厳寒期は山から足が遠のきがちだが、晴れた日の低山は静かな山歩きができる。

眺望が開け、空気が澄みわたる冬場は、雪がない関東近辺の低山を選んでトレーニング登山に出掛ける。

立春を迎える頃、早春を告げるロウバイ(蝋梅)が里山を黄金色に彩る。2月7日、ロウバイが咲く宝登山(埼玉県長瀞町)の長瀞アルプスを歩いた。

午前10時前、秩父鉄道の野上駅にハイカーが次々と降り立った。ロウバイが見頃とあって、30人はいた。

宝登山は2度目と言うHさんの道案内で長瀞アルプスの万福寺登山口から登り始めた。山頂まで約2時間の登り道はよく整備され、奈良沢峠までは未舗装路を走るトレイルランに最適な緩やかな道が続く。

平日にもかかわらず、ツアーの登山者など、上からも下からも人が途絶えることがない。宝登山は標高497㍍の低山だが、冬はやはり眺望がいい。

3カ月ぶりの山行となったOさん、膝の故障を抱えるHさんにはちょうど良い尾根歩きである。

奈良沢峠から林道を15分ほど登ると、山頂への急な登りに入る。しばらくすると、道は階段に変わった。

この階段はステップを踏まず左右から登れるので、子供や高齢者でも登りやすい。上に伸びる長い階段を黙々と登っている姿は山岳信仰の修行僧である。

長瀞アルプスらしい登りは唯一ここだけ。200段の長い階段を登り切るとロウバイが山一面に広がる山頂に出た。

山頂には三つのロウバイ園と梅百花園があり、ロープウェイで登ってきた観光客がのんびりと花見散策をしている。甘い香りが特徴のロウバイは花が下向きに咲き、花弁はロウのような質感である。

眼下に長瀞や皆野の町々、その後ろに石灰岩がむき出しの武甲山が見えた。宝登山から眺める黄金色の山々はもう春の装いである。

1万5000平方㍍、約3000本のロウバイの写真を撮っていると時間を忘れる。気が付いたら、午後1時半を過ぎていた。

山頂には立派な大鳥居を構えた寶登山神社の奥宮がある。三峰・秩父神社と並ぶ秩父三社の一つで、約1900年前に日本武尊が皇祖神武天皇・山の神・火の神を祭ったのが始まりと聞いた。日本の山岳信仰の足跡を辿ることができるのも低山歩きの面白さである。

下山は奥宮から麓の寶登山神社まで30分程参道を下る。毎年、関東一円から100万人の参拝者が訪れるとあって、社殿には彩色豊かな彫刻が施されていた。

下山後、長瀞駅から徒歩5分の長瀞岩畳に立ち寄った。荒川の上流渓谷をゆったりと水が流れていく。厳寒の2月とは思えない穏やかな風景だ。

宝登山は四季折々の自然が登山者を温かく出迎えてくれる。その名の如く、宝の山である。(ペンとカメラ・大石 翠)

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