未来のための家庭のおはなし

「性別移行」を後悔する少女

令和時代の家族のかたち《42》 「LGBT」に関連して気になる出来事がありましたね。  6月20日、米国のインターネット募金サイト「ゴー・ファンド・ミー」に16歳の女の子が投稿した内容ですね。彼女、ペニー・カニンガムさんは胸部再建手術のために1万5000㌦の寄付を求めており、8月はじめの時点で4000㌦ほどが集まっています。   なぜ、その手術を受けようとしているのですか。  実は、彼女は性別への違和感を理由に15歳で両乳房を切除する手術を受けたのですが、手術の後で自分の性別違和が思い込みだったことに気付いて、女性に戻り、元の体を手に入れたいと望んでいるのです。   詳しい経緯は分かりますか。  彼女の説明によると、彼女は11歳でトランスジェンダーであると両親にカミングアウトし、ジェンダー・クリニックに通い始めました。両親は最初、驚き、戸惑ったそうですが、終始、彼女を支えてくれたそうです。インターネット上でも多くの人から「体に不快感があるなら、あなたはトランスジェンダーかもしれない」と言われ、彼女は自分が本当は男性だと強く思い込みました。   そこから性別移行処置を始めたわけですね。  そうです。具体的には13歳でホルモン治療を始めました。最初は女性ホルモン(エストロゲン)を抑制する薬を服用。その結果、ホルモン・バランスが崩れて彼女の体重は20㌔前後増えました。さらにセラピストの認可の下、男性ホルモン(テストステロン)を処方されています。彼女は体つきの変化がうれしかったようですが、一方で精神的な面では改善が見られませんでした。そして、15歳の時、トランスジェンダーとしてのごく普通の決断だと信じ、両乳房切除手術に踏み切ったのです。   その結果、性別違和の苦しみは解消されたのでしょうか。  残念ながら、彼女の精神状態は逆に悪化してしまいました。自己嫌悪も改善せず、2カ月後には精神病院に入院。彼女は入院中に、自分の性別移行が間違いだったと気付き、名前も女性に戻し、脱移行(デトランジション)しました。現在、彼女のアイデンティティーは安定し、自分が女性であることを受け入れています。ただし、「私の胸には大きな傷が残り、体の部位(乳房)はなくなってしまった」と嘆き、元通りの見掛けを取り戻したいと切実に願っています。ただ、再建手術に保険は適用されないため、募金集めを始めました。   考えさせられる事例ですね。  以前にも英国のケールさんという少女の例を紹介しましたが、性別移行の後に元の性に戻したいと願うケースは後を絶ちません。ペニーさんは、乳房切除を前後して自閉症と診断されており、現在の医師は自閉症と性別違和に関係があったのではないかと話しているそうです。実際、子供が訴える「性別違和」の8割前後は大人になるまでに解消するので、簡単にトランスジェンダーと決め付けることは控えなければなりません。その意味で、昨今の「LGBT」に関する情報の扱いは子供への影響という点で心配ですが、それは次回、考えていきましょう。

少子化時代で輝きを失う日本

令和時代の家族のかたち《6》 ー改めて日本が置かれている状況について教えていただけますか?  まず、世界に例のない深刻な状況であることは間違いありません。人口減少はもちろんですが、年齢構成のいびつさがもっと深刻です。子供が生まれないことで、国全体の未来の活力が大きく損なわれています。   ー具体的にイメージしたいのですが。  例えば、成長著しいインドネシア(2億6000万人)と比べてみましょう。同国の出生率は「2.34」で未来を担う子供たちがたくさん生まれ、育っています。2016年時点で国全体の平均年齢は28歳。30歳以下が人口の43%を占め、国民の半数近くが子供と若者です。翻ってわが国の平均年齢はほぼ50歳(49歳)。30歳以下の人口が3割を切る(27%)一方、65歳以上の高齢者は28 %を超え、間もなく3割に達します。どちらの国に勢いがあるかは一目瞭然でしょう。 ー確かに。働き手の数自体、全然、違ってきますね。  はい。いわゆる「生産年齢人口(15~64歳)」ですが、インドネシアでは、毎年ここに400万人の若者が加わります。日本の約4倍です。もちろん、失業率も高めですが、新しいエネルギーが絶えず供給されるという意味で非常に魅力的です。逆に、日本は労働市場から出ていく人数すら補えていません。その結果、生産年齢人口が急速に減少し始めており、2065年にはピーク時の約半分になると予測されています。また、生産年齢人口が減るということは、単に働き手が減るだけではありません。 ーどういうことですか?  働き盛りの年代は、消費の中心でもあります。つまり、モノを買ってくれる消費者も減ってしまうのです。これは、企業にとっては苦しいですね。   ー確かに、いろんな市場が縮小し始めているとも聞きます。  例えば、アパレル業界はピーク時の2/3に縮小しており、大学は学生の確保に苦しんでいます。五輪前で過熱気味の首都圏のマンション市場も、やがて買い手がつかなくなるでしょう。家を購入する平均年齢は分譲の戸建て住宅で39.4歳、マンションは43.3歳。つまり、35~44歳が住宅市場の中心なのですが、その年代の人口も2015年の1800万人から、2040年には1200万人まで減少する見込みです。   ー外国人を招き入れることについてはどうですか?  「どうせ迎えるなら、優秀な人材を」と思うかもしれませんが、実際に高度なスキルを持った若者が日本に来たがるかというと、これも疑問です。市場が小さくなる日本は、チャンスを求める若者にとっても魅力が薄いからです。ちなみに世界の高度人材(大卒以上)に、「働きたい国」を選んでもらったところ、日本は63カ国・都市のうち51位に沈みました。深刻なのはアジアでも11番目という数字。インドネシア(18位)、タイ(24位)、フィリピン(30位)などよりも遥はるかに魅力がないのです。逆に、日本人でも起業家精神にあふれた若者は、日本以外の活力ある国で働きたいと思うでしょう。このままでは、ますます日本は高齢者だけの、未来のない国になってしまいます。

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