歌手・ユニット「ブラックコーヒー」
野上こうじwith司 紘人
「〝ブラックコーヒー〟の〝コー〟 です!」(野上)、「〝ヒー〟 です!」(司)と楽しそうに語るのは、歌手の野上こうじさんと司紘人さん。
2人は、野上が永年MCを務めている千葉テレビの『歌謡最前線』で15年ほど共演している仲。これまで互いにソロで活動してきたが、現在頑張っている『天神橋』(詞・北爪葵、曲・南乃星太)は2人のデュエット。今が最高にノッている。
『天神橋』は、元々は野上が2018年にリリースした、花シリーズの『白いストレリチア』のカップリング曲だった。歌詞は、男同士の友人が天神橋を巡る旅をして友情を深める曲。
野上の所属事務所で「男2人のデュエットも面白いんじゃない?」と話がまとまり、社長がゴルフの練習に行っていた野上に電話をかけた。相手は、その時たまたま一緒だった司に白羽の矢が立った。
その場で野上が「ツカちゃん、オレと一緒にデュエットやる?」と聞き、司が「やりますよ」と曲も何も分からぬまま、本当に軽いノリで決まった。

デュエットといってもハモリは無い。「仲がいいので、ハモリたくても一緒になっちゃうんです。離れたくなくて(笑)」と野上。仲の良さが伺える。2人の声質は結構違うが、奇遇にもそれが良い方に出ている。
いま思うと、「この曲は最初から2人で歌うことが前提で作られて、曲に僕等が引っ張られたような感覚です」(司)と、運命的なものまで感じている。
メイン曲より評判のよかった『天神橋』を前面に走り出そうとした時、運悪くコロナ禍に見舞われたが、めげずに2020年からこの曲1本で全国をキャンペーンで回り続けている。
この曲のプロモーションビデオは、2人とも黒スーツに黒サングラス。きっかけは意外なところから。観客を楽しませるため、司がマジックを習得した。「マジックといえば?」ということで、ミスター・マリック張りにサングラスを。
ところが、男2人で黒サングラスをかけてみたところ、連想するのは『あぶない刑事(デカ)』。そこからプロモーションビデオは、あぶデカよろしく黒スーツで、玩具の拳銃片手に、見えない敵を相手に追いつ追われつで、とにかく走っている。
強面そうな2人が歌ったり走ったり遊んだりする姿は、意外にもお茶目で微笑ましい。「実はあの時、通風で、走るの大変だったんですよ」(司)と、今ではなんとか笑って話せる。
タイトルの『天神橋』は歌詞の一番から三番まで登場するが、場所が全て違う。それというのもこの天神橋、全国になんと約450箇所もあるという。全てを回ることはできないが、1日に数カ所回ることはあるという。
昨年『歌の手帖』(歌の手帖社)とのコラボ企画で〝天神橋歌唱動画キャンペーン〟が開催された際、サングラスで歌う人や、天神橋をバックに歌う夫婦など、沢山の応募があった。
野上はこれまで、女性ダンサーを従えて華やかに歌い踊り、足を高く上げるパフォーマンスで客席を沸かせたり、サービス精神旺盛で知られる。が、そんな野上にとってもこの『天神橋』のキャンペーンは、かなり破格。通常キャンペーンとは持ち歌を何曲か歌うものだが、「この曲しか歌いません」(野上)。歌とマジックの他に、なんと整体も施す。
司はキャンペーンのために整体師の資格を取得するとは実に奇特。その場で姿勢の矯正や、肩凝りへの施術を施す。「とにかくお客様に楽しんで、元気になってもらいたいんです。楽しいと人は病気も治るんです」
フレンドリーな2人のインパクティブな歌を聴き、マジックで感嘆。体も癒やしてくれるという2人にしかできないトリプルパンチで、参加した人にとって忘れられないひと時となるだろう。
この日も筆者の目の前で司がスプーンを曲げたりちぎったり、筆者の肩に手を充て、〝気〟を送り込んでくれた。
黒づくめの〝コー〟と〝ヒー〟。この日、改めて「よし、『ブラックコーヒー』で行こう!」と正式なユニット名に決めた。
第2弾のプロモーションビデオは全く違う雰囲気とのこと。1曲でPVを2本とは珍しい。「『天神橋』でどこまでも行きます。新曲考えてません」(野上)
きょうび、おじさん人気がすごい。今年、ブレイクの予感がする2人である。
(ペン・星野睦子)
(写真提供=株式会社「朝月」)