古い町並みのグルメタウン

観光立国への新ルート 昇龍道を行く《22》
飛騨高山(上)

古い商家や造り酒屋が軒を連ねる「上三之町町並保存区域」

 飛騨の高山といえば、高山祭、「飛騨の小京都」と呼ばれる古い町並み、歴史的には「飛騨の匠(たくみ)」などをまず、思い浮かべる。これらが、高山市の魅力の柱であることは間違いないけれど、初秋のJR高山駅に降り立ち、昼すぎの街の中を歩きながら、まず外国人観光客の多さに驚いた。外国人観光客が増えたのは、2009年に「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で三つ星を獲得したのがきっかけという。
 
 次に幾つものラーメン店の前に行列ができているのを見て、高山が今やグルメタウンになっていることを知った。昔から飛騨牛が知られているが、それに高山ラーメンが加わった。高山ラーメンが有名になったのは、新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』(2016年)に登場したのが一つのきっかけとなった。
 
 駅から古い商家や造り酒屋の並ぶ伝統的建造物保存地区へ続くメインストリートを行く途中、飛騨国分寺をまず訪ねた。国分寺が置かれていたことは、天平の昔から飛騨地方に高い文化があり、ここがその中心であったことを物語っている。
飛騨国分寺の三重塔のそばで休憩する外国人観光客
 
 境内には本堂、三重塔のほか戦国期に建てられた鐘楼門が配置され静かな空間をつくっている。外国人観光客もちらほら見える。チリからブラジル人のガールフレンドと来たという男性は、「日本の古い町が好きでやって来た。とても美しい町でみんな親切」と言う。高山観光はユネスコ世界文化遺産の白川郷とセットのケースが多いが、白川郷も行くのかと聞くと、意外にも白川郷を知らなかった。
 
 さて、昼飯はやはり高山ラーメン。インターネットで調べると、市内に幾つもある高山ラーメンの人気店の一つが、ちょうど国分寺の近くにあったので入ってみた。ヨーロッパかららしい旅行客の隣のカウンターに座って食べたが、鶏ガラをベースにした昔の支那そばを思い起こさせる。四方を山々に囲まれた地方都市でこういう懐かしい味に出合うのは不思議な感じがするが、この町の雰囲気にふさわしい味だとも思う。
飛騨牛にぎり寿司店の前には長い行列が
 
 古い町並みの残る上三之町を歩きだすと、そこでまた行列のできている店に出会った。飛騨牛にぎり寿ずし司の店で、若い人たちが列を成している。翌日、客のすいている時に買って食べたが、感動ものだった。表面を少しあぶったものを握り寿司にしたものだが、肉とは思えない柔らかさ。もし将来、マグロが漁獲禁止となり、トロが食べられなくなったようなとき、そのロスを埋められるのは飛騨牛の握りではないかと、真面目に考えたくらい。
 
 日本にはブランド和牛が幾つもあるが、飛騨牛の特徴は、見た目にはピンクに近い色をしていること。霜降りの細かさからくるものらしい。そして牛肉らしい香りも強いような気がする。いずれにしても握り寿司は、飛騨牛の特徴を生かした料理といえる。
 
 飛騨牛がその代表なのだろうが、高山では食べ物一つにしても、澄んだ空気と清らかな水を感じさせられる。

(「昇龍道」取材班)

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