7月の豪雨災害の復旧途上、そして「5類」となったコロナ禍の中で、8月3日から6日まで「秋田竿燈まつり」が秋田市の竿燈大通りを主会場に行われた。4日間とも快晴が続き、去年より30万人多い110万人が全国から訪れた。

華やかで軽快なお囃子と次から次へと繰り出される差し手の妙技に大きな拍手が起こる。東北三大祭りの一つで、国の重要無形民俗文化財。
今年は伝統ある38町内と学校・職場・企業29団体から大小合わせて256本が出竿。午後7時すぎ、掛け声に合わせ、ろうそくを灯した総数約1万個の提灯が一斉に立ち上がり、夜空に揺らめく。まるで光り輝く黄金の稲穂のようだ。

力強い太鼓と繊細で伸びやかな笛の音色が会場のそこかしこから響き渡る。コロナ禍のため例年のような大歓声は控えめだが、スピーカーから流れる「ドッコイショー、ドッコイショ」の声が一帯を祭り一色に染め上げる。
揃いの半纏に帯を締め足袋姿の差し手が交代しながら手のひらや額、肩、腰に移し替えていく。「大若」は長さ12㍍の竿に46個の提灯を吊し重さは約50キロ。差し手が両手を広げ竿燈の動きがぴたっと止まると、観客はその粋な姿に拍手を送る。時折、強い風が吹いて竿燈が傾くと、「ああっー」という声が出るも、緊張が一瞬緩み、次の妙技に目が向かう。

夏の睡魔や穢れを払い五穀豊穣を祈る行事として、約270年もの間、庶民に受け継がれてきた。今年、秋田県は記録的な豪雨災害に見舞われ、県全体では約5000棟が床上・床下浸水した。竿燈に、災害復旧の願いが重なる。
提灯や半纏には町内ごとに「町紋」が描かれ、帆船、エビ、米俵など歴史と誇りの印が浮かび上がる。
一方、これら「夜竿燈」に対し、4日からは別会場で、差し手と囃子方が技を競う第75回竿燈妙技大会(昼竿燈)が6日まで開かれた。1チーム5人で30秒刻みの技を競う団体規定では保戸野鉄砲町Cが優勝、豪雨被害を受けた登町Aは準優勝だった。
(写真と文・伊藤志郎)