花の名所「赤城山」 50万株のツヅジがお迎え

ツツジが彩る赤城山帯

赤城山は群馬県のほぼ中央に位置し、5月下旬から6月上旬にかけて山一帯が50万株ものツツジで彩られる。火口湖の大沼を中心に黒檜山、駒ケ岳、地蔵岳、荒山、鍋割山、鈴ケ岳、長七郎山からなる複成火山で、花の山としても知られている。

主峰の黒檜山は標高1828㍍と低い山ではないが、赤城神社の先にある登山口から2時間ほどで登ることができる。
前日の雨が上がり、大沼湖畔はひっそりと澄んでいた。この日は午後から天候が崩れるとあって、登山者は少ない。

岩場の急登を20分ほど登ると、眼下に大沼と朱色の赤城神社がくっきり見えてきた。快晴なら赤城山全体を眺望できる。
予報より天候の崩れが早いのか、標高が上がるにつれ雲が広がり、山頂に着いた時はどんよりと曇っていた。この先の雲の動きが気になる。

スマホの雲レーダーではこれから1時間は晴れるとの予報。小休憩の後、写真を撮っていると雲間に青い空が見えた。絶景を期待し、次の駒ケ岳(1685㍍)に向かった。

見晴山展望台からとがった荒山が見える
見晴山展望台からとがった荒山が見える

駒ケ岳への縦走路は展望の良いハイキングロードが続く。徐々に山霧が晴れ、日差しが山容を照らし始めた。新緑の若葉にシロヤシオの白い花が映える。

多種のツツジや白いズミに彩られる赤城山は花の自然公園である。そして上毛三山の妙義山の荒々しさとは対照的に、この山には人を包み込む優しさがある。

天気が良ければ駒ケ岳から鳥居峠に下り、覚満淵を経由して長七郎山まで足を延ばしたいところだが、雲行きが怪しくなってきた。

一旦下山し、小尾瀬と呼ばれる覚満淵を一巡り。ツツジは終わり、湿原は白いズミの花が満開だ。ここは希少な高山植物やコケ植物を見に訪れるハイカーも多い。

覚満淵から大沼を右回りに、ツツジの群生地・見晴山へ向かった。車道から10分の見晴山はレンゲツツジやヤマツツジが満開。展望台からとがった荒山を遠望できた。

花の山をこよなく愛した作家の田中澄江さんは69歳から『花の百名山』を書き始め、72歳で上梓した。本を書き上げてから登山回数は年間40~50回と、前よりもっと登るようになった。

登山口からは岩場の急登が続く
登山口からは岩場の急登が続く

山好きな人には、ひたすら頂上を目指して登る人、植物や花が見たくて登る人、二つのタイプがある。若い時は前者であっても、60歳過ぎても山に登り続ける人は概して後者である。私もそうだが、花や植物の面白さを知ってくると山への向き合い方も変わってくる。

赤城山は観光地化された山だが、大沼湖畔から幾つもの登路があり、どこから登っても眺望が素晴らしい。だから家族連れから高齢者まで楽しめる。

花好きの人なら歳を重ねても登りたくなる花の名山である。 (ペンとカメラ・大石 翠)

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