【中高年の山行考】大自然の白馬大池・乗鞍岳に行く

北アルプス後立山連峰にある白馬岳(標高2832㍍)は、日本最大の雪渓・白馬大雪渓(長野県北安曇郡白馬村)を有する。雪渓の上部は日本有数の高山植物の宝庫で、夏の大雪渓は長蛇の列となる。

ところが今年、大雪渓にクレパスが多発し、大雪渓を通る猿倉ルートは7月4日から通行止めとなった。そこで、栂池ロープウェイで自然園駅(標高1829㍍)まで上がり、そこから白馬岳をめざす白馬大池ルートで行くことにした。

梅雨明けの7月23日早朝7時、登山道入り口の栂池山荘に大きなザック姿の登山者が次々とやってくる。ここから白馬乗鞍岳を経て白馬大池まで約4時間の行程である。その日のルートと天気を確認し、歩き始めた。

イメージ図
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瑞々しい樹林帯を1時間ほど上ると、湿原が広がる天狗原(2202㍍)に着いた。尾瀬を思わせる木道の周りに真っ白なワタスゲ、水辺を覗けばサンショウウオが泳いでいた。

ここから本格的な登りが始まる。手と足をフルに使って岩場の急登を約1時間、ようやく小雪渓が見えた。

1㍍近い大岩をいくつも渡り、小雪渓の渡渉ルートに辿り着いた。雪道は安全ロープが張られ、アイゼンも必要ない。数年ぶりの雪渓歩きはドキドキする。

無事に一番の難所を登り切り、ハイマツ帯が広がる台地に出ると、大きなケルンが見えた。白馬乗鞍岳(2469㍍)である。ここからは白馬大池に下るだけである。

10分ほど下ると突然、真っ青な白馬大池と赤屋根の大池山荘が現れた。前方に残雪の小蓮華岳、雪倉山。アルプスらしい絶景に疲れを忘れる。

大池の周りはチングルマのお花畑
大池の周りはチングルマのお花畑

昼前、チングルマ、シナノキンバイ、コマクサ、チシマギキョウなど高山植物が一帯に広がる白馬大池に着いた。小蓮華岳に向かう道の両側は花の絨毯のようである。

白馬岳まで約4時間だが、山小屋で天気予報を確認すると、今夜から明日は大雨、しかも山頂は強風である。天候は急変している。登っても白馬山荘で足止めとなるかもしれない。

岩稜帯を抜け、小雪渓を上る
岩稜帯を抜け、小雪渓を上る

その日、山小屋のスタッフは宿泊の取り消しと日程変更、天候情報の対応に追われた。食堂では登るか下りるか、皆決めかねていた。大分からフェリーと車で2日掛かりで来たという女性2人組は、「費用と時間を考えるとあきらめきれない」と悔しげに話していた。

翌朝、私を含め多くの登山者は登らず、雨風が強くなる前に下山を始めた。雨の中、滑りやすい岩場を安全に早く下山しなければならないから、緊張の連続である。眼下に天狗原の湿原が見えた時はほっとした。

夕刻、湖畔には色とりどりのテント
夕刻、湖畔には色とりどりのテント

夏の白馬岳や唐松岳などは、天候が安定していれば山初心者でも十分登れる。ただ、高山は2日連続で晴れることは少ない。

今回、登山者を拒む北アルプスの厳しさを体感できたのは収穫である。白馬岳山頂のお花畑と大雪渓は来年の楽しみにとっておこう。(ペンとカメラ・大石 翠)

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