スクリーンならではの没入感
350年以上の歴史を誇り、世界最高峰のバレエ団とも呼ばれるパリ・オペラ座の『白鳥の湖』を最前列で鑑賞するかのような体験が映画館でできる。バレエ作品として初の高精細度のIMAX認証カメラによって収録された「Filmed for IMAX」作品として、『パリ・オペラ座「白鳥の湖」IMAX』が劇場公開される。
あらすじは、呪いによって白鳥に変えられた王女オデットとジークフリート王子の恋の物語。ジークフリート王子は理想の愛を夢見るが、誕生日の宴に花嫁を選ばなければならない。周りに諭されながらも、悪魔ロットバルトによって、白鳥の姿に変えられたオデット姫に出会い、恋に落ちる。真実の愛だけがオデットにかけられた魔法を解くことができると聞いた王子は、誕生日の舞踏会にオデットを招待する。
しかし、当日に表れたのはオデットとそっくりなロットバルトの娘、オディールだった。王子は気付かずに、オディールに結婚を誓ってしまい、オデットを失うことになる――。
チャイコフスキーの音楽で有名な『白鳥の湖』はバレエの古典的作品で、パリ・オペラ座の振付はバレエ界の伝説ルドルフ・ヌレエフによるもの。最大の特徴は、王子の深層心理に光を当てている上、王子ジークフリートの家庭教師の正体が悪魔ロットバルトだということだ。通常の『白鳥の湖』よりもロットバルトが重要なキャラクターとして描かれている。

舞台で鑑賞するのとは違い、まるで見ている側もダンサーになったかのような没入感とカメラワークが印象的だ。ダンサーたちの眉の動きや、一瞬だけ上がる口角、視線の動きなどが鮮明に映し出される。真上からダンサーたちの整然とした美しい動きを見られるのも、映画ならではの魅力だろう。
白鳥オデットと黒鳥オディールの2役を演じるパク・セウンは韓国出身で、パリ・オペラ座では初めてのアジア人エトワール。儚げな白鳥のオデットから雰囲気がガラリと変わり、妖艶な黒鳥オディールを演じた。王子がオデットと勘違いしてオディールに結婚を誓う場面のパクの演技が鮮やかで、頭に焼き付いて離れないほど印象的だった。
東宝東和配給で、11月8日より7日間限定公開。TOHOシネマズ 新宿ほか、各地の劇場で上映される。(宮沢玲衣)