劇団鳥獣戯画『うしろの正面だあれもいない』

〝校則〟は誰のため?

和製ミュージカルやボードビルショーをはじめ、幅広いジャンルのオリジナルミュージカルを発信し続ける劇団鳥獣戯画(座長・知念正文)の第105回公演は、なんと小学校を舞台にした「うしろの正面だあれもいない」(作・演出・振付け=知念正文)。下北沢のザ・スズナリで、10月30日から11月3日まで上演された。

よい意味で裏切ってくれた。オープニングから、いい大人たちが小学生の格好でランドセルを背負い、これでもか、というくらいぎこちない芝居を展開する。

それは、昼間児童たちが小競り合いで、カッターナイフでクラスメートを傷つけてしまった一件を、先生たちが児童役を演じての現場検証だと後に判明。同じように話し、動いてみないと子供たちの気持ちが分からない、という理由からである。ところが事は簡単にはいかなかった。真相に全くたどりつかないどころか、教師の悩みやPTAが絡み、物語は二転三転三回転半ひねり。

その小学校には、毎日毎日校則を付け加える校長がいた。多すぎる校則で、児童も教師もがんじがらめ。どうやら元凶はそれである。一体誰のための、何のための校則か!

小道具は、ほぼほぼ小学生用の机と椅子のみ。場面に合わせて絶えず形を変える。時にリビング、時にラーメン屋、時にバリケード。

役者たちは終始自ら組み立てたり積み重ね、器用に乗ったり昇ったり。一歩間違えたら大けがである。一見地味だが立派なパフォーマンス。かなり緻密に計算されている。にも関わらずストーリー展開が猛スピードで、観客にじっくり考える時間は与えられない。

劇中で空中ブランコを披露したユニコ(撮影:山口笑加)
劇中で空中ブランコを披露したユニコ(撮影:山口笑加)

意外な展開の連続に、まさか!そんな馬鹿な!という思いも湧く。多少消化不良の感も残るが、結局、教育に〝絶対正解〟はないのだ。永年子供たちと一緒に舞台を作り続け、小学校で上演を重ねてきたGIGAだからこそ感じたことを今回舞台に表してくれた。

言うはやすしであろうが、ぜひとも子供たちの心は、自由に成長してほしいものである。

今回の出演者は総勢14人。来年で創立50周年を迎えるGIGA。知念と石丸有里子という演劇のスペシャリストを軸に、仲間たちと共に新たなことに挑戦し続けてきた。そこにコントーションや空中芸までも習得した、知念と石丸の娘・ユニコが加わり、劇団はさらに盤石なものに。

終演後のあいさつで知念は謙遜していたが、それは観客を楽しませるためなら、そして伝えたいことがあるならどんなことでもする!という決意の表れに聞こえた。(星野睦子)

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