天才外科医の過去が明らかに
2012年10月から7シリーズ放送された「ドクターX」のシリーズ完結編となる劇場版が公開となる。フリーランスの外科医・大門未知子の活躍を描いた医療ドラマだ。
東帝大学病院に若き新病院長・神津比呂人(染谷将太)が現れる。比呂人は凄腕の外科医で政財界にも顔が利き、双子の弟・多可人(同)は医療開発会社で資金のバックアップもある。徹底的な合理化の大号令がかかり、次々と医師や看護師たちを辞職させていく。
外科医・大門未知子(米倉涼子)は某国の大統領の命を救うため日本を離れていたが、かつての同僚・森本光(田中圭)に呼び戻された。比呂人と意気投合するが、未知子の師匠・晶(岸部一徳)と会った比呂人は顔色を変える。
比呂人・多可人はかつて晶の患者で、30年前のまだ胎児だった際に危険な手術を受けた。それが原因で多可人は深刻な障害を負っていたのだ。
一方、未知子に命の危機を救われた森本は、スーパードクターがどうやって生まれたのか、未知子の過去を調べ始める。生まれ故郷の広島・呉を訪ね、話を聞いていく森本。そこで知ったのは、想像をはるかに超えた過去と人物像だった。そして何より大きかったのが、未知子が所属する“神原名医紹介所”の所長で、元外科医でもある師匠・神原晶の存在だった――。
見どころの一つである手術シーンは、回想も含めて7件ものオペが描かれる。器具や装置はそれぞれの手術に該当する本物を使用するなど、細部までこだわった。患部を切開するシーンでは、精巧に作られた人形に着色した食用肉を貼り付けるなどの工夫を凝らし、リアリティーを生み出している。
オペの準備をするシーンは、時代とともに刻一刻と変わる医療の進化に合わせ、近年メインになってきている消毒をする描写に変更。リアルな医療の今を切り取っている。

ドラマシリーズ2作目から蛭間重勝役で出演した西田敏行さんは、本作が遺作となった。完成報告会見では、「蛭間重勝役は、好きな役のベスト5に入るんです。ずっと蛭間重勝でいたいなという気持ちがあったもんですからね。だから、終わるのは嫌だなっていう感じはしてます」としみじみと語っていた。西田さんの「蛭間院長」も見納めだ。
脚本は2025年前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』も手掛ける中園ミホ。監督は田村直己。シリーズ全作を手掛けて来た両者が、映画でも失敗知らずの腕前を見せる。主題歌は、Adoの「Episode X」。12月6日全国公開。(森 啓造)