教科書には載らない、知られざる史実を下敷きにしたアクション・エンターテインメント時代劇『室町無頼』。映像化されにくいといわれる室町時代の京都を舞台に、現代社会の世相を重ね、アウトローたちの生きざまを描く大作が公開を控えている。
大飢饉と疫病の連鎖がこの国を襲った1461年。応仁の乱前夜の京都では、人身売買や奴隷労働が横行していた。賀茂川べりには、無数の遺体が重ねて積まれている。
時の権力者は無能で、享楽の日々を過ごすばかり。寺の僧侶たちは土倉に紛れてあくどい金貸しをしたり、勝手に関所を設け通行税を取ったりとやりたい放題。貨幣経済が進んで富める者はより一層富み、貧富の差はかつてないほど広がっていた。
牢人・蓮田兵衛(大泉洋)は、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぐ自由人だ。各地を放浪し、農民や商人たちとも広く交流を深めていた。しかし時には関所を破って番兵を殺し金銭を奪って平然としている上に、金銭に欲が無く物事に執着しない男だった。
一方、すさまじい武術の才能を秘めた若者・才蔵(長尾謙杜)は、自己流で修めた棒術を頼りに土倉の用心棒の片棒を担いだものの、天涯孤独で餓死寸前を生き延びていた。絶望の中にいたある時、兵衛に見出され、〝六尺棒〟を駆使する棒術を極めるため唐崎の老師(柄本明)の元に修行に出される。やがて超人的な棒術を身に付けた才蔵は、兵法者の道を歩み始める。
いよいよ、民の不満は限界に達し一揆をおこす機運が高まった。抜刀術の達人、槍使い、金棒の怪力男、洋弓の朝鮮娘ら、個性たっぷりの牢人たちを束ね着々と準備を整える兵衛。ついに巨大な権力に立ち向かい、京の市中を舞台に空前絶後の一揆を仕掛ける。

©2025『室町無頼』製作委員会
行く手を阻むのは、洛中警護役を担う骨皮道賢(堤真一)。実は兵衛と道賢はかつて志を同じくした悪友だった。〝髑髏の刀〟を手に一党を動かす道賢を前に、兵衛は命を懸けた戦いに挑む。そんな二人の突き進む運命を、兵衛の想い人である高級遊女の芳王子(松本若菜)が静かに見届ける。
監督は『あんのこと』『22年目の告白 -私が殺人犯です-』の入江悠。堤真一演じる骨皮道賢の戦闘時の衣装は鉄の鎖帷子から転用・制作され、関所で火災が起こる場面では俳優たちも驚いたという爆発のシーンなど、監督のこだわりが随所に見られる。
Disney+のドラマ『SHOGUN』で注目された東映京都撮影所・衣裳部の古賀博隆氏が、衣装アドバイザーで参加した。
原作は垣根涼介の同名小説。1月17日全国公開。(森 啓造)