ネット社会に一石投じる
自分の信じている情報や世論が、誰かに意図的に操作されたものだったら…?インターネットを通じた世論操作という陰謀論を描き出した韓国映画『コメント部隊』は、SNS、ネットメディア全盛の現代に一石を投じる作品だ。
実力はあるが見栄っ張りな新聞記者のイム・サンジン(ソン・ソック)は、大企業・マンジョンの不正に関する特ダネ記事を出すが、後に誤報であることが判明し、停職処分となった。処分に納得がいかず自堕落な生活を送っていたサンジンに、ある「情報提供者」から一通のメッセージが送られてくる。
指定された待ち合わせ場所に行くと、メッセージの送り主だという青年(キム・ドンフィ)が待っていた。「チャッタッカッ」と名乗る青年は、マンジョンの誤報騒動は自分たちコメント部隊による工作であり、自分なら誤報の汚名をそそげると主張する。「金さえあれば、真実を嘘に、嘘を真実にすることができる」と言うが、サンジンが慎重に面会を重ねても、この青年の意図はいまいち伝わってこない。もともとはアマチュア作家だというこの青年は本当に、ただ単にコメント部隊の存在を世に知らせたいだけなのだろうか。

サンジンはマンジョン不正の真相を暴くためにもう一度立ち上がるが、事件は想像以上に大規模なものだった――。
『誠実な国のアリス』(2015年)で韓国社会を風刺し注目されたアン・グクジン監督9年ぶりの新作で、脚本も自ら手掛けた渾身作。主人公・サンジンの職場であるチャンギョン日報はじめ、サンジンの住まい、チャッタッカッと会う喫茶店、コメント部隊のアジトまで、役者と観客の没入感を高める空間の表現にこだわったという。

監督は「永遠に消えることのないネット世界で、何度も見返せる映画になってほしい」と願いを語る。映画界にありそうでなかった、リアルで新しい犯罪ものに仕上がっている。われわれが日々接する情報はどこまで真実で、嘘なのか。世界を見る目が変わるかもしれない。
主演は韓国で今、最も影響力のあるトップ俳優として名を馳せるソン・ソック。コメント部隊のハッカーを演じる3人の若手俳優たちとの共演も見どころだ。2月14日シネマート新宿ほか全国公開。(辻本奈緒子)