カルチャー

大根の恩返し

 私たちがよく知る古典作品には、ちょっと不思議な物語が記されていることもあります。今回は日本三大随筆の一つ、兼好法師の「徒然草」から、ある奇談を紹介します。 (編集・石井孝秀)  その昔、筑紫国(現在の福岡県)に押領使の男がいました。押領使とは平安時代、警察のような役割を果たしていた役職です。  この押領使の男は健康に気を遣うタイプだったようで、特に大根が大のお気に入り。「大根は万病に効く薬だ。わしは毎日食べているから、病気知らずなんだぞ」と豪語するほどで、毎朝、獲れたばかりの土の付いた大根を、2本も焼いて食べていました。  そんな生活が数年続いたころ、ある日突然、押領使の館が悪漢たちの集団に襲われたのです。運悪く館には押領使しかおらず、その隙を突かれて完全に包囲されてしまいました。  必死で戦うものの多勢に無勢。賊に追い詰められ、もはやこれまで…と押領使が覚悟を決めたその時、どこからともなく2人の兵士が助太刀に入ってきたのです。  助太刀の兵士は賊を相手に、命すら顧みない大立ち回りを繰り広げます。賊たちはどんどんなぎ倒され、とうとう尻尾を巻いて逃げ出していきました。  九死に一生を得た押領使でしたが、それにしても流星の如く現れた男たちに、一切心当たりがありません。不思議に思いながら、押領使は礼を言いつつ、「こんなにも命懸けで戦っていただくとは、いったいどこのどなたでしょうか」と尋ねました。  すると、男たちは「われわれは、毎朝お召し上がり下さっている大根でございます。あなた様が万病の薬と信じて下さるお心に、今こそ応えねばと思い、助太刀に参上した次第」と答え、そのまま姿を消してしまいました。 【解説】  鎌倉時代の随筆「徒然草」といえば、「つれづれなるままに、日暮らし」でよく知られています。学生時代に古文の授業で学んだという人も多いでしょう。世捨て人のように暮らす著者の自論のほか、見聞きした話も多数収録されており、大根の恩返しもその中の一つ。  「鶴の恩返し」や「分福茶釜」など、日本には数多くの報恩系昔話が存在していますが、大根が体を張って凶賊から守ってくれるとは、なかなかユニークですね。食べ物を好き嫌いする子供に聞かせてあげるのも面白いかもしれません。

日韓給食・お弁当事情、日本の〝お弁当文化〟が話題に

「韓国人はご飯パワー(한국인은 밥심)」という言葉があります︒パプシム(밥심)とは、ご飯パワー・お米パワーのこと。 「ご飯食べましたか?」が安否を尋ねる挨拶になっているくらい〝食べること〟は生きること・元気になること・健康の元として重要視されています。

初夏を彩る「藤」と華麗な金魚ーアートアクアリウム美術館GINZA

日本最大級の金魚アートを誇る「アートアクアリウム美術館GINZA」(銀座三越新館8階)は、4月26日から初夏の企画展を開催している。これに先立ち、25日、報道向け内覧会が行われた。

「マイ・スイート・ハニー」

お菓子メーカーの研究者と、男運に恵まれないシングルマザーの純心で不器用な恋を描く映画「マイ・スイート・ハニー」。主演には、「コンフィデンシャル:国際共助捜査」で北朝鮮の捜査員とタッグを組む刑事役など、これまでシリアスな役を演じてきたユ・ヘジンが初のラブコメディーに挑戦した。

【物語③ 漫画家・吾峠呼世晴】連載の辞め方

これまで鳥山明さんと尾田栄一郎さんを取り上げ、連載の辞め時について触れてきました。今回は『鬼滅の刃』の原作者・吾峠呼世晴さんを取り上げたいと思います。人気絶頂にもかかわらず、続編や脇役たちに焦点を当てたスピンオフも潔く断った漫画家です。

空手の精神性 現代に伝えるー近代空手の父 糸洲 安恒

2021年、東京オリンピックで空手が新種目として採用され、男子「形」で沖縄県出身の喜友名諒選手が金メダルを手にした。長い年月をかけ受け継がれてきた日本空手の洗練された動きに、世界が圧倒された瞬間だった。

「彫刻は美しい虹のよう」ー彫刻家 本郷 新

今年1月26日から28日までの3日間、札幌市中央区の一角で「さっぽろ雪像彫刻展2024」なるものが開かれた。札幌の雪像といえば「さっぽろ雪まつり」が有名で、自衛隊の隊員や市民が参加する大規模なイベント。

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