吉田悦花のわん句にゃん句

毛布嚙むガラスケースの中の犬(313)

スヌーピーで有名な漫画『ピーナッツ』に出てくるキャラクターのライナスは、青い毛布を抱える姿がトレードマークになっている。毛布があると安心するのだ。

霜の花ひとたび猫に附きて消ゆ(312)

霜の花とは、空気中の水蒸気が凍って、まるで花のような美しい氷の結晶を指す。冷えて乾燥した朝にしか見られない、はかなく美しいもの。

紐解かれ枯野の犬になりたくなし(311)

昔は、犬の紐を解いて野に放てば、喜んで全速力で遠くに駆け出していった。けれども、最近の犬は、飼い主である人間の保護下にあることにすっかり馴れてしまって、むしろ紐を解かれることを喜ばず、逆に不安を感じるのかも。

枯芝に身を擦る猫や失業す(310)

家の中で猫は、柱やドアや家具の角などの出っ張っているところに身を擦る、いわゆる「スリスリ」する。人にもよく身を摺り寄せる。

柿落ちて犬吠ゆる奈良の横町かな(309)

「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」は、正岡子規が生涯で詠んだとされる約20万句以上の俳句の中で、最も有名な句の一つ。

猫も野の獣ぞ枯野ひた走る(308)

山口誓子の句に「土堤を外れ枯野の犬となりゆけり」がある。この句は、その猫版といえるかも。

露寒や乳房ぽちりと犬の胸(307)

冷え込んだ秋の朝、朝露が光る。濡れた犬の胸の乳房のふくらみ。その生々しさにはっとさせられ、生命の息吹を感じる。

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