吉田悦花のわん句にゃん句

遅き日や土に腹つく犬の伸び(324)

 遅き日は、春の日がなかなか沈まず、日が長くなっていく様子。太陽が傾くのが遅く、のどかでゆったりとした時間が流れる印象を受ける。

猫の恋了る木乃伊にされしごと(323)

 発情期は恋に狂った猫も、ついに恋の了りを迎えた。麻布にぐるぐる巻きにされた木乃伊(ミイラ)にされたかのように、ふぬけの状態になってしまったのか。恋の虜となった恋猫の姿をユーモラスに表現、人間の情念も浮かび上がる。

いぬふぐり咲くや「地球は青かった」(322)

 世界初の有人宇宙飛行に成功した旧ソ連の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリン。無事に帰還したとき、宇宙から見た地球を「地球は青かった」と述べたという。

のどをかく肢のはやさや二月猫(321)

暦の上では春とはいえ、まだ寒さが残る二月。のんびり日向ぼっこをしていた猫が、ふと後ろ肢で、のど首の辺りをすごいスピードで掻き始めた。

冬の日を一枚重ね猫の昼(320)

 もうすぐ立春、春はもうすぐ隣。風はまだ冷たいけれど、日差しはきらきらと輝き、暖かみを増している。

しろたへの鞠のごとくに竈猫(319)

 しろたへとは「白妙」のこと。こうぞなどの樹皮から取った繊維で織った白い布、それで作った衣服をいう。転じて白さそのもの、雪や雲や霞や月などの白いもの、衣類全般にかかる枕詞として使われる。

羽子板を犬咥え来し芝生かな(318)

 羽子板は、正月の遊びの羽根つきに使う道具。魔除けやお守りとして女の子に贈られ、健やかな成長を願う縁起物である。

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