「風変わりで色とりどりの玩具でいっぱいの、奇妙な巨大ミュージアムを生きるように、世界を生きる」(「パリ手稿1999-14」より)
20世紀を代表する画家ジョルジョ・デ・キリコ(1888年~1978年)の国内10年ぶりとなる大回顧展「デ・キリコ展」が、東京都美術館(台東区)で開かれている。
ジョルジョ・デ・キリコは、ギリシャでイタリアの両親のもとに生まれ、ミュンヘンの美術学校で絵画を学んだ。
ニーチェなどドイツ哲学に影響を受け、1910年頃から「形而上絵画」と名付けられた作品を発表する。

形而上絵画とは、歪んだ遠近法や脈絡のないモチーフの配置で、幻想的な雰囲気をまとった絵画のこと。これがサルバドール・ダリやルネ・マグリットなど多くの画家に衝撃を与え、この時期の作品群が特に高く評価されている。
同展では、自画像や肖像画をはじめ画家の名声を高めた「形而上絵画」や、西洋絵画の伝統に回帰した作品、晩年に取り組んだ「新形而上絵画」など世界各地から集めた100点以上の作品が一堂に並ぶ。このほか、彫刻や舞台芸術、挿絵など幅広い創作活動も展示・紹介する。
デ・キリコ作品によく登場するのが、2つのマネキンだ。「ダンサー」という絵画にも見られるように、顔のないマネキンに不思議と何かの表情を感じられるのが面白い。
展示会場で印象的なのは、鮮やかな赤や青、オレンジ色の壁。カラフルな壁が、デ・キリコ作品の表情を引き立たせている。

冒頭のデ・キリコの言葉通り、「風変わりで色とりどりの玩具でいっぱいの、奇妙な巨大ミュージアム」を体感できる展覧会だ。
会期は8月29日まで。9月14日~12月8日には神戸市立博物館にも巡回予定。(竹澤安李紗、写真も)