企画展「北海道樹木万華鏡」開催

樹々がつくる神秘な〝かたち〟を見る

5月は北の大地・北海道に生息する植物が一斉に芽吹き、花を咲かせる季節。そうした北海道の樹々が持つさまざまな〝かたち〟に焦点を当てた企画展が今、北海道博物館(札幌市厚別区)で開催されている。その名も第22回企画テーマ展「北海道万華鏡~スキャンアートと標本で見る木々のかたち」(4月27日~6月23日)。スキャナーグラファーの孫田敏氏による樹木の繊細な〝かたち〟に焦点を当てたスキャナー作品、半永久的に残る腊葉標本(押し葉標本)、数千万年から7000万年以上前の古代に生きた植物の化石標本など、多面的な視点からの北海道の樹木の世界を紹介する。

北海道を代表する針葉樹の葉や球果(まつかさ)を撮った作品
北海道を代表する針葉樹の葉や球果(まつかさ)を撮った作品

北海道の公園や山間でよく見掛ける樹木といえばハルニレやナナカマド、イタヤカエデ、カツラなどが挙げられる。ただ、それらが持つ繊細な構造や神秘的な美しさについてはよく知らない点が多い。そんな植物の世界を家庭用のスキャナーを使って独自の手法で撮影したのが孫田氏の作品。今回、展示されているスキャン作品は全部で16点。

例えば、桜や梅の花ビラはピンク色の美しい花を咲かすが、ハルニレの花は花びらを付けず十数個の花がかたまりとなって咲いてゆく。受粉して生まれた小さなタネは風に乗って地面に落ち、発芽してゆく。それが何十年以上もかけて高さ30㍍の大木になってゆくのだが、孫田氏の作品ではハルニレの雄花、雌花、そして発芽の様子が神秘さをもって捉えられている。

緑と赤の色彩のコントラストが美しいハウチワカエデ
緑と赤の色彩のコントラストが美しいハウチワカエデ

ところで、北海道はアンモナイトや恐竜など大型化石の宝庫と思われがちだが、植物化石の化石となると意外に見つけるのは大変。今回の企画展で展示している植物化石は北海道で産出したもの15点ほどが並ぶ。

化石標本のコーナーを担当している成田敦史学芸員は、見どころについて「植物化石には、外形や葉脈の跡が岩石に残った印象化石と植物遺体が地層中に圧縮されて残った炭化化石、また植物の身体が鉱石に置き換えられえた鉱石化石がありますが、それぞれの化石から葉脈や葉の緑のキザギザ(鋸歯)を見ることができ、植物の構造や当時の気候などを知ることができます」と語り、中生代、新生代の植物の生育環境を知る手掛かりになるという。

数千万年以上の植物の様子を示す植物化石
数千万年以上の植物の様子を示す植物化石

今回の企画テーマ展を企画した水島未記学芸員は「樹木は遠目に見ると同じような形に見えますが、細部を見詰めていくと、芽のかたち、花のかたち、葉のかたち、実のかたちはそれぞれ違い神秘的で独特の美しさを持っています。そんな樹木の世界はまるで万華鏡のようで、そうした樹木の〝かたち(世界)〟を見てほしい」と語る。なお、同館の開館時間は午前9時30分~午後5時、月曜日休館。(ペンとカメラ・湯朝 肇)

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