映画『私にふさわしいホテル』

日本の文学界を舞台に、俳優・アーティストののん扮する新人作家と滝藤賢一演じる文壇の重鎮が繰り広げる「下剋上」劇『私にふさわしいホテル』が完成した。

数々のコメディー作品に出演してきた2人が堤幸彦監督とタッグを組み、その屈指の演技力を発揮。家族や大切な人とのひとときを映画館で過ごすのにふさわしい一作に仕上がっている。

冒頭で主人公が取り出したのは、原稿用紙とペン。と思えば、舞台は1984年。若手作家の相田大樹こと中島加代子(のん)は、名だたる文豪たちに愛されてきた歴史のある「山の上ホテル」に泊まるのをたまの贅沢にしている。最高の設備、最高のホスピタリティーを誇る老舗だ。

宿泊費用はファミレスでバイトして貯めたお金を費やしている。新人賞を受賞して華々しいデビューを飾った加代子だが、実はまだ一冊の単行本も出せていないのだ。

原因は、大御所作家の東十条宗典(滝藤賢一)が加代子の作品を酷評したことだった。そのせいで加代子は、どの出版社からも相手にされず、東十条を恨んでいる。

やり手編集者の遠藤(田中圭、左)はどちらの味方なのか、最後まで分からない     ︵C︶2012 柚木麻子/新潮社 ︵C︶2024「私にふさわしいホテル」製作委員会
やり手編集者の遠藤(田中圭、左)はどちらの味方なのか、最後まで分からない     ︵C︶2012 柚木麻子/新潮社 ︵C︶2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

そして、いつの日かこのホテルにふさわしい作家になることを夢みて、その日もとびきりのおしゃれをして泊まりに来ていた。

大学時代の先輩で、今は大手出版社の敏腕編集者である遠藤道雄(田中圭)が、加代子の宿泊している部屋を訪ねてきた。遠藤から、上階のスイートルームで宿敵・東十条が締め切り直前で缶詰めになっていると聞いた加代子は、復讐のため、ある作戦に出る。

不遇の若手とベテラン作家の文壇バトルが幕を開ける。勝者は果たしてどちらか――。

加代子による迫真の演技と、それに振り回される東十条とのバトルはコント顔負け。劇場で笑い声が抑えられないほどだ。

つかみどころのない編集者・遠藤役の田中圭はじめ、高級クラブのママを演じる田中みな実、超カリスマ書店員役の橋本愛、東十条の妻役に若村麻由美など、実力派キャストが脇を固める。

(C)2012 柚木麻子/新潮社 (C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会
(C)2012 柚木麻子/新潮社 (C)2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

原作は柚木麻子の同名小説。東京・神田駿河台に実在する山の上ホテルは現在休館中。

12月27日より新宿ピカデリーほか全国公開。(辻本奈緒子)

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