箱根の絶景縦走!金時山から明神ケ岳へ

金太郎伝説で知られる箱根金時山(1212㍍)は山頂から仰ぎ見る秀峰富士が美しい。神奈川と静岡の県境に位置し、登山口の公時神社から80分、金時見晴パーキングからは50分で登れる。子供の頃に家族と登ったという人も多い。

ただ、金時山は知っているが、そこから先に足を延ばす人は少ない。昨秋、初めて金時山に登り、明神ケ岳・明星ケ岳の3座を縦走した。展望のよい爽快な尾根道、そこから見える富士山と金時山のコラボが面白い。

箱根の山は登り口が多く、どの山も1000㍍前後と低い。空気が澄み、冠雪富士が見られる秋から初冬の時期がいい。

12月2日、山仲間5人と金時山・明神ケ岳を縦走した。

晩秋の箱根を彩る〝マユミ〟
晩秋の箱根を彩る〝マユミ〟

公時神社に車を停め、7時40分に歩き出し、9時過ぎには山頂に着いた。山頂はよく晴れて穏やか。昨年登った時より富士山の雪が多い。金時山は30年ぶりというKさんは、久々に見る冠雪富士に見惚れていた。

週末の山頂は公時神社、乙女峠、矢倉沢峠の3方面から来る登山者で一杯になる。そのまま下山してしまう人が多いが、金時山で終わったらもったいない。

金時山から明神ケ岳まで3時間弱。箱根篠竹の緩やかな尾根道がどこまでも続く。篠竹は箱根に自生する直径1センチメートル、背丈2㍍位の細竹で、昔は行李(竹などを編んで作るかごの一種)や、壁芯の材料として重用されていた。毎年8月、「箱根強羅温泉大文字焼」で篠竹を束ねた松明の「大」文字が燃やされる。

明神ケ岳まで続く箱根篠竹の道
明神ケ岳まで続く箱根篠竹の道

背丈のある篠竹に挟まれた尾根道は爽快で歩いているとトレイルランをしたくなる。箱根の山は里や海が近い。この日は箱根の仙石原や大涌谷、遠く相模湾までよく見えた。

振り返るたびに、金時と富士の位置が微妙に変わり、消えては現れる。登り切ったところで後ろを見ると、富士山を背中に金時山が実に堂々としている。ここから眺める金時山が一番かっこいい。

山の楽しみの一つは、季節の花々と出会うことだが、この時期は花が少ない。色がない尾根道で、花好きのHさんが華やかな赤い花に目を向けた。グーグル検索したら「マユミ」という名の落葉小高木だった。

花期の初夏に緑の花、葉が紅葉すると赤い実が四方に割れて、まるで花が咲いたように美しい。清少納言の『枕草子』にも歌われ、花がない晩秋の山に彩りを添える。この時期だからこそ出会えた植物である。

早朝、山頂から冠雪富士を拝む
早朝、山頂から冠雪富士を拝む

長い篠竹の道が終わり、紅葉する広葉樹林を抜けると道は急に緩やかになった。程なく広々した明神ケ岳(1169㍍)の山頂部に着いた。ここは360度の眺望だが、着いた頃は富士山が雲にお隠れだった。

この日の歩行距離16㌔、7時間超。ロング縦走となったが、箱根の紅葉と温泉で心身共に癒された。(ペンとカメラ・大石 翠)

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