玉城知事の不祥事相次ぐ県政、自民党が徹底追求

「先住民族」主張NGOと連携

沖縄県の玉城デニー知事は9月18日、スイス・ジュネーブを訪れ、国連人権理事会で基地負担軽減などを訴えるスピーチを行った。その際、玉城氏と連携しスピーチ枠を用意したNGOが、沖縄県民を先住民族であると主張し活動する「市民外交センター」だったことが判明し物議を醸している。

スピーチは玉城氏がNGO団体の発言枠を借りて行われた。その団体名は「市民外交センター」で、恵泉女学園大学の上村英明教授が代表を務める。同団体のホームページを確認すると、先住民族の権利などを主張する組織であることが分かる。同サイトには「北米の『ネイティブ・アメリカン』、豪州の『アボリジニ』をはじめ、日本にもアイヌ民族と沖縄・琉球民族が存在しています」との記述がある。

これは、国連がこれまで沖縄の人々は、日本政府に支配されている「先住民族」であるとして、「琉球・沖縄の人々を先住民族として認め、その権利を保護すべき」として、計6回に渡って出してきた勧告の趣旨と一致する。

同問題について、玉城氏の見解は一貫している。「これまで沖縄県民が先住民族であるかの議論をしておらず、また、県全体においても大きな議論となっていない」ことを理由に「意見を述べる立場にない」というものだ。

ところが、県の公務として国連でスピーチした際、このような思想のNGOと連携したことは、彼らの活動に加担しているとの批判は免れまい。

玉城氏の一連の国連訪問を担当した県の「辺野古新基地建設問題対策課」に、この件について取材したところ、国連への入館申請やエントリーなどの具体的な手続きは「一般社団法人新時代アジアピースアカデミー(NPA)」に委託したという。同法人の共同代表は市民外交センターと同一の上村氏だ。

先住民族勧告の問題に詳しい一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚理事長は、同NGOの英名に注目する。市民外交センターのホームページを見ると、英語での団体名には、日本版にはない「Indigenous(先住民族)」の文字が含まれているというのだ。

 

反基地運動と連動も不祥事相次ぐ県政に不満の声

日本沖縄政策研究フォーラム・仲村覚理事長
日本沖縄政策研究フォーラム・仲村覚理事長

仲村氏は、「玉城知事は、『先住民族のための市民外交センター(英名)』の代表者として全世界にスピーチした。これは、沖縄県民が先住民族であると世界に発信していることと同じだ」と危機感を示す。

さらに、今回のスピーチが辺野古移設訴訟の最高裁判決後に行われた点に触れ、「今後は、『基地反対を訴える先住民族』と『基地建設を強行する政府』という対立構造に持っていく恐れがある」とし、今後の反基地運動の新たな争点に「先住民族問題」が利用される可能性に警鐘を鳴らした。

これら問題について、県議会野党の沖縄・自民党は10月6日の定例県議会一般質問で徹底追及した。

座波一県議(自民)は国連活動の適切性について、玉城氏が連携したNGOの実態が明らかになったことについて、「知事は(同NGOがどんな組織か)当初から分かっていたのか。知っていたのなら、知事は県民を騙したことになる」と詰め寄った。これに対し玉城氏は、「(同NGOは)国連の中でも評価が高いと聞いている」と答弁。

続けて座波氏が「(どんな)団体か分かった上で、その枠で発言したということで良いか」と重ねて質すと、玉城氏は「そのグループがさまざまな活動をしているということは承知している」としながらも、あくまで県知事として発言したものだと釈明した。

花城大輔県議(自民)は、県が同組織に業務委託として、関連費用で700万円ほどを算出した点について、「県予算で執行する妥当性はあるのか」と質問。県当局は、国内外に沖縄県の問題を広く世界に発信することができたとし、妥当性を主張した。

自民会派としては、これらの問題を県内世論に浸透させたい考え。ただ、地元メディアが県政批判に消極的で、知事を追い詰めるまでのうねりは起きていない。傍聴者の一人(男性)は「知事はのらりくらりかわすばかり。県民をバカにしている」と不満を漏らした。

県はこのほか、複数の不安要素を抱える。有害な有機フッ素化合物(PFAS)を含む泡消火剤が今年の6月、県庁舎から付近を流れる久茂地川に流出していたことが9月12日の時点で分かっていたにもかかわらず、26日まで公表しなかったことが発覚。さらに、県議会与党会派の会派室で本会議中に県職員2人が飲酒したことが立て続けに報じられ、県民からは不満の声が上がっている。

(川瀬裕也)

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